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ベトナムタクシー


車で15分ほどの滅多に来ない公園で、息子と遊んでいた。

落ち葉が舞い、秋らしい風景に、おっそろしく冷たい風。

寒いので息子とただただ走った。走った直後はあたたまるが、すぐに体は冷え切ってしまう。

コアラの子供用の乗り物を、「いけーーー!」と叫びながら競馬騎手のように乗っている息子を見つめながら、「早く帰りたい」と思っていた。

なんとか息子が帰る気になって、しめしめと思っていたら、近くからにぎやかな声。
5,6人の女性たちで、日本語を喋っていない。アジア系の顔立ち。声がものすごくでかくて、なんだか楽しそうである。
こんな観光スポットでもないところなのになあと思いながら歩いてたら、一人の女性がスマホを持ってニコニコしながら近づいてきた。

ああ、写真ね。そう思って待機していたら、

「スミマセン、ココ イキタイデス」

片言の日本語話す女性に、聞きなれない言葉を話しながらスマホを指さす女性。一斉にとにかく話しかけらる。

まとめると、どうやら京都駅に行きたいらしい。

その公園が最寄駅からかなり遠くにあり、タクシーを拾っていったほうがいいと伝えると、「タクシーは?」ということになった。

「ちょっと待ってね」と、わたしが調べようとすると、女性たちは満面の笑みで「スミマセーン!」と、言った。


通りで待っていても中々タクシーはつかまらないし、配車をしてもらえるようにタクシー会社に電話した。
数件電話したが、繋がらなかったり、空車がないとのことだった。


ああ、、と途方に暮れかけて、ぱっと遠くを眺めると、その女性たちに抱っこされた息子は楽しそうに、写真を撮ってわいわいしていた。
「カワイイ、カワイイ」と言われながら、息子もまんざらでもない顔をしている。

なんだか、楽しそうだな、と思いながら、
「タクシーつかまらないから、うちの車に乗って、最寄り駅まで送るよ」というと、彼女たちはまたもや満面の笑みで、「アリガトウゴザイマーッス!」と言った。

車に乗ったはいいが、後部座席を振り返ると、定員オーバー、インドのバスか!と思うくらいのキュウキュウぶりだった。(うちの車はただの乗用車です)
「オッケー!!」と口を揃えて笑う彼女たちに、「もう、いい、なんとなる」と思いながら、アクセルをふんだ。

どうやら彼女たちはベトナムから来ていて、日本で仕事をしているそうである。今日は観光でうろついてるようだ。

どこに住んでいるの?と聞くと、「じゅーそー」
ああ、十三!大阪ね、と言うと、「ノーノー、キョウト!」

京都にじゅうそうってあったけ?

なんていう、よくわかならい会話をし続けた。

一人の女の子が「でんしゃ」のことを、「じてんしゃはどこ?」と間違って聞いていたので、後部座席の友達に「あんた、ちがうわ!」(ベトナム語で)と、後ろからばしっ!と、はたかれていた。
ベトナムでも、ツッコミ文化があるのかと一瞬目を見張る。


そして「ベトナムといえば、、フォー(ベトナムの麺)が好き」と言うと、彼女たちは一斉に盛り上がり、「ああ、フォーね!!」と大いに喜んだ。


ぱっと息子を見ると、生まれた時から彼女たちの傍で暮らしていたかのような、くつろいだ顔をしていた。

にぎやかなずっこけベトナムタクシーツアーはJRの最寄り駅で終了した。
「これに乗ったら、京都駅すぐやし」と伝えると、「アリガトウゴザイマース!」と、みんないい笑顔をくれた。

比較的日本語が喋る女の子が、「フォーをあなたに贈りたいから、住所を教えてほしい」と言ってきた。
レシートの裏に住所と名前を書いて彼女に渡した。

「アリガトウ!!」と、彼女と握手して、みんなを見送った。

ちゃんと彼女たちが京都駅に着けるか、フォーが送られてくるかどうかわからないが、ベトナムの女性の目はきらきらときれいで、どこか親しみがわくすてきな笑顔であった。


家に着くまで妙にテンションが上がり、昨日作ったバーモントカレーを息子と食べながら、ほっこりした。



by mosottto | 2016-11-06 19:38 | エッセイ