映画のなかの映画


久しぶりに映画を観た!という映画を観た。

1973年アメリカ映画’ペーパームーン’

映画はBSプレミアで録画したものを観ているのだが、この映画は大分前に録画したものの、観る気がせずにしばらく放っておいた。
ロードムービーのような雰囲気があったので、せかせかした毎日の合間に観る気がしなかったのだ。

しかし突然、「観よう!」と思い立ち、観始めるとぐんぐん引き込まれ、最後のラストシーンにぽろりと泣けた。

戦争映画を観て悲しさで泣くという涙でなく、人間の心の中にあるものを揺らされて泣けた、というかんじだろうか。


それにモノクロの映像も写真集を観てるかのように美しいし、物語のテンポもいいし、ドロドロとした複雑な心理描写もなくとても軽い。
ハラハラドキドキもあったり、ユーモアもあったり、最後はじんわりと終わる。

子供が煙草吸ったり、詐欺師になるのも、映画らしいシーンで好きだ。(今の時代ならNGだろうか?)

なにより、主人公の子供と詐欺師の男の背負ってる孤独感と、ずるがしこく生きるたくましさがこの映画の魅力を増している。

どうもわたしはどこか影が潜みながら(人間の弱さというのか)強く生きていく人間を描いたものにとても惹かれてしまうのだ。

とにかくとてもいい映画だった。


あと二作品。
’’バードマン’’
’’めぐりあう時間たち’’

バードマンは夫が観たいといって借りてきた映画で、始まって二分くらいで寝てしまった。
どうも眠くなる映画があるのだ(ネバーエンディングストーリーと紅の豚は、何度観ても途中で寝てしまう)

夫は最後まで観て、「あの結末には納得いかない。どういう意味なんや、あれは。もう一回観て、見解を教えてくれ」と言うので、仕方なく頑張って寝ないで最後まで観た。
わたしはハッピーエンディングだと捉えたが、夫はあのラストは主役の俳優が本当に自殺してしまい、夢の中のシーンではないか、というのだ。
そうじゃないと、納得いかない、というのだ。

わたしの考えは追い詰められた芸術家が自殺することは想像できるし、けれど自殺してそれで終わりました、というのが安易すぎるのでは、と思った。

それでも、「いや、それは違う、それだと納得いかない」と、最後までこの映画の結末に対して、異常な執着を見せる夫に、半ば呆れかけていた。

その後に、一人で’’めぐりあう時間たち’’という、これもまた芸術家が出てくる話の映画を観終わったときに、「バードマンの夫の説は当たってるかも」と感じた。
二人の作家が自殺するのだが、何かを表現する人間にとって追い詰められた先にあるのは、生き続けるより死という選択肢しかないような気がした。

この映画では平凡な主婦が自殺未遂をはかるものの、結局は長く生き、生きるつらさと同時に彼女しかわかりえない満たされた気持ちを得た表情が印象的だった。

どちらも重い映画なので、何度も観れないのだけど、バードマンはドラムだけを使った効果音と、映像の撮り方がものすごい芸術的というか、美しくて心に焼き付いている。


この秋一番観たい映画は、阪本順治監督のチェゲバラと共に戦った日系人を描いた映画(確かキューバと合作)だ。
阪本監督は’’顔’’を観て以来の大ファンで、’’ぼくんち’’も大変良かった。’’’団地’はよくわからなくて、この監督ってちょっと変態やなとも思った。

先日、なぜかわたしの夢の中に出てきた阪本監督。
漫画のような、コンテ?のようなものをわたしが描いていて、それを監督に見せているという、奇妙な夢だった。
監督はやさしく「煮詰まってる?難しいよね~」と笑っていた。
わたしの頭の中は一体、どうなっているのだろう。




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by mosottto | 2017-07-13 15:37 | 映画のこと | Comments(2)

久しぶりの映画ネタ


2016年度のアカデミー賞授賞式の様子をテレビで観ていた時のことである。

夫と映画などを一緒に観ていると、ずっと彼は横で話しかけてくる。
大体物語の行方はどうなるのか?などの、観てればわかるやないか、という問いかけだ。
「集中して観てんねん!黙ってくれ」と、一喝すると、「真剣やな」と、40手前のおっさんが口をすぼめるのである。

このアカデミー賞の時も、黙ってじいっと観ていると、いつものようにいろいろ話しかけてくるので、一切問いかけには答えず無視した。

すると、「すごい観てるな。ほんまに好きなんやな。うーん、でもその熱い思いは、おれはいいと思う」などと、勝手にわたしの映画好きを自分の中で認めていた。

ある黒人女優のスピーチが始まり、その彼女の思いが胸に響き、だーだーとわたしは涙を流していると、夫はその女優を観て呆れたような声で、
「なんやこれ、教会の説法みたいやな」と、ほざいた。
本気で殴ろうかと思ったが、こんなことくらいでエネルギーを消費するのは大変無駄だと思い、拳をおさめた。


さてアカデミー賞はさておいて、映画である。
古い映画を立て続けに観た。

’恐怖のメロディ’と、’招かれざる客’である。

恐怖のメロディはクリント・イーストウッド監督主演の映画で、まだストーカーという言葉がない時代のサイコスリラーらしい。
だがわたしにはどうもB級映画臭くて、クリント・イーストウッド一体どうしちゃったの?というかんじだった。
このクリント・イーストウッドの演技に夫は大変ウケていた。


’招かれざる客’は、黒人と白人の恋愛がタブーの時代に描かれた映画で、一日の出来事をテンポよく見せる構成だった。大きな動きもないし、絵的にも変化がないのだが、俳優たちの緊迫した演技でぐいぐい引き込まれていくのが圧巻であった。
シドニー・ポワチエもキャサリン・ヘプバーンも観ていて惚れ惚れした。


義父が息子にと持ってきたディズニーアニメ’ズートピア’は、息子はもう5回くらい憑りつかれたように観ている。
絵はかわいいが、内容はトランプ政権に向けられてんのか?と思わせるメッセージ性もりもりで結構シビアだ。

こんな内容子供が観てもおもろいのか?と思ったが、さすがディズニー、ハラハラドキドキシーンと、ユーモアシーン、そして最後はVIVA!みんなハッピーに踊りまくって終わりっ!という流れで大変子供は満足してるようである。
一緒に観ていた夫の横顔を見ると、苦虫かみつぶしたような顔をしていた。





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by mosottto | 2017-03-17 14:45 | 映画のこと | Comments(0)

映画、海よりもまだ深く


是枝裕和監督の新作映画『海よりもまだ深く』を観に行った。

少し前に購入した雑誌SWITCHの樹木希林特集(わたしは樹木希林のファンなのです)で、是枝監督とのインタビューやこの映画についても書かれていたので、興味があったのだ。

でも是枝監督の映画は一本も観たことがなかったので、予習の意味で、『歩いても歩いても』をTSUTAYAで借りてみた。

うわ、辛気くさいホームドラマやな、と正直に思った。

だから今回の新作も辛気くさかったらどうしよう、と中々気が進まなかったのだが、タイミングよく京都シネマに行く機会ができたのだ。


しかし幕が開いたら、辛気くさいとは程遠い、どうしようもないくらいユーモアにあふれた映画で、この映画の主人公のキャラクター(親のすねをかじって、嫁に愛想をつかされた、売れない小説家)がうちの夫にそっくりだったので、もう笑うしかなかった。

映画の中が、現実なのか、現実が映画なのか、もはやわからない状態になってしまうくらい、「うちのどたばたホームドラマ」を観ているようだった。

うちの夫はこの主人公のようにギャンブルをするわけでもないし、嫁(わたし)に愛想を尽かされ離婚してるわけでもないけれど、「結婚にまったく向かない男」ということと、「夢を追いかけてる男」という共通点がまったく一緒で、醸し出してる空気感がほぼ夫であった。
だからある意味笑えない映画なのだけど、もう声をだして笑うしかないのだ。


あー、いい映画だった、とぼんやりエンドロールを眺めていたら、なんと終わりに是枝監督が登場した。
実は今日は監督による舞台挨拶だったのだ!

お客さんの質問に答えるコーナーがあり、会場の是枝ファンが質問
していた。もう今日で4回目です、という方も。
同じ映画を劇場で4回て、すごい。

隣に座っていた青年が緊張しながら手を挙げた。

「監督の映画は大変ミニマムな作りの映画が多いと思うのですが、、」と喋り出した。
真顔で「ミニマム」と発する人を初めて見て、少し引いた。

なんだよ、ミニマムって。日本語で言ってくれよと、心の中で思いながら、質問コーナーは終わってしまった。


その後も監督は劇場に残っていたので、パンフレットにサインをしてもらった。

もちろん、「あの主人公、夫そのままでした!」と報告。

監督は「あ、観ててイラついた?」と、聞いてくれたのだが、イラつきはしなかったのだ。

観終わったら、あの主人公もあの映画もまるごと愛おしく感じだのだ。
自分の人生も家族も、まるごとおもしろいわ、と思えるくらいに。


ほんと素敵な映画だった。
樹木希林さんは最初この映画の出演を断っていたらしいが、観たら、希林さんにしかこの役はやれない、希林さん以外にこの役を演じられる人はいないと思った。
さすがだ。
阿部寛の人間味あふれる演技もだいすきだ。





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by mosottto | 2016-12-09 14:17 | 映画のこと | Comments(2)

永い言い訳


西川美和監督の最新映画、’永い言い訳’を観に行ってきた。

その前に、初期の作品’蛇イチゴ’のDVDを夫と観たのだが、

「ただでさえ日常生活が嫌なこと多いのに、映画の中でもヒリヒリになりたくない。こんな映画は嫌いや!」と言い放った夫。

「人の好きな映画をぼろくそ言うな!自分の心の中だけで思っとけ!」と、わたしは抗議した。

夫は西川監督の描く、「人間のだめな部分」というテーマが嫌なようである。
以前も書いたが、夫は映画に大変感情移入するタイプなので、ダメな登場人物たちと同じようにヒリヒリしてしまうらしい。
なので、観ていて非常につらいのだ。

わたしは、人間が持ってるだめな部分こそが、ザ・人間!と思ってるので、見ていて登場人物が愛すべき人に思えるし、ほー、この俳優さんそういう演技するんか、とか、へー、こんな撮り方あるんか、とか、作品全体を見渡してるような見方をしているため、まったく感情移入しない。

どっちの見方が良い悪いもないだろうし、人の視点なんて十人十色でいいじゃないかとも思うが、自分が嫌な気分になったからといって、目の前でこんなクソ映画と言われると、非常に腹立たしい。

「うるさいわ、ぼけ」と思いながら、意気揚々と映画館へ向かった。

京都シネマという、大変狭い劇場が、ほぼ満席に埋まっていた。

シニア世代が異様に多い。
’ディアドクター’で知ってファンになった層だろうか。わたしはまだ’ディアドクター’を観ていないけど、勝手にそんな気がした。


映画はすごく完成度が高くて、見やすい映画だった。
くすっと笑ってしまうシーンもあるし、どこかほっこりする。

あまりに完成度が高すぎて、見終わってからぼんやりしてしまった。

そのあと、フランス×ドイツ×ユーゴスラビア合作のサラエボ出身の監督の’黒猫 白猫’を夫と観る。

とにかく奇想天外、はちゃめちゃで奇天烈な映画だったけど、夫は大絶賛していた。
昔のドリフのコントに近いかんじ。んな、あほな、と何度もツッコんでしまった。

登場人物はみんな奇天烈、嘘はつかず、みんなやりたいことをするという、ここ日本においては中々のはみ出しキャラなのだが、みんな奇天烈だから誰も浮いていない。
ストレートな夫にはこの映画の世界観がぐっとくるらしい。

たぶん夫が’永い言い訳’を観たら、発狂するだろう。

わたしは対極の映画を同時に観て、もうお腹がいっぱいだ。






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by mosottto | 2016-11-09 14:26 | 映画のこと | Comments(2)


先週観た西川美和監督の『ゆれる』が、あまりにも良かったので、監督の別の映画も観てみることにした。

『蛇イチゴ』
西川監督の初作品。

一気に見終わって、興奮した。
理由もなく踊りだしたいかんじだ。
フィーリングがばっちり合う人と出会ったようなかんじで、異様にテンションが上がった。

その気持ちを抑えきれず、鼻息荒く、「やっぱりこの監督すきやわ!!なんか音楽の使い方とか、テンポ感がめっちゃいいねん!」と、台所でチャーハンを作ってくれてる夫に報告した。


夫は、
「いいやん。そういう自分の好きなのものをそのかんじでブログで伝えてみたらいい」と、いやに冷静なコメントを真顔でくれた。



とにかく、西川監督の映画は、わたしの肌に合うのだ。
肌に合う、まさにそう。


特典にあったインタビューを観ていると、謎がするっと解けた。

『蛇イチゴ』の前のタイトルは、『Family Afair』にしようと思ってたらしく、それはスライ&ザファミリーストーンというバンドの名曲で、黒人音楽好きの人の中では「毎度おなじみの」くらいの曲なのだ。

やっぱりか!と思った。
劇中で使われる曲のテイストが、ファンクやジャズっぽい曲なので、この監督黒人音楽好きなんかなあとうっすら思ってたけど、やっぱりだった。

音楽のルーツがすごく近いということは、その作品に流れる空気感もやはり共鳴してしまうものなのだ。


作家の西加奈子も大好きで、彼女も黒人音楽好きだ。


わたしのルーツはジャズやソウルやファンクやブルーズで、そういう中でもちょっと泥臭いものが好き。
土着っぽいかんじだろうか。

人間模様のドラマも、ちょっと救いようがないどうしようもない人間とか、またその対極の人とか、そういう、「人間やしいろいろあるわな」と匂わせるものが好きだ。

『蛇イチゴ』に出てくる登場人物も、まさに救いようながないような人たちばかりだけど、それがすごく人間界の縮図を見てるようでおもしろい。

正しいことだけがすべてではない。正しさとか、正義感のようなものは時に鋭利な刃物のようになることだってあるし、ウソばかりつく人生はどうしようもないけど、そのウソが人生を面白くさせてることだってある。

そうそう、オモシロかったらええやんと思えてしまうのが、人生であり人間なんやと思う。

夫がこの映画をちらっと観て、
「こんなくそみたいな家族とは会いたくないわっ」と、鼻息荒く怒っていた。(夫は映画にめちゃくちゃ感情移入するタイプです)

「不器用でもいいから、がむしゃらに生きて、決してうそをつかない人生をおれは歩む」と、聞いてもいないのに、人生観を宣言しだした。


まあ、なんでもいいけど、あなたはやりたいように生きたらいいよ、と心の中で思った。


とにかく、西川監督だいすきだ。今月公開の映画も必ず観に行くんだ。
ついでに西加奈子の新刊も12月発売だ。

とてもしあわせだ。





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by mosottto | 2016-10-26 13:41 | 映画のこと | Comments(0)

映画、映画、映画づくし


息子は両親の好きなものをよくわかっている。

音符マーク☞♪を見ると、「あ、お父さん好きなやつや」と言うし、
テレビでBSプレミアムシネマの劇場シーンが流れると、「あ、お母さんが好きなやつや」と言う。


映画好き、と自覚したことはないが、なんだか最近異様によく映画を観ている。



劇場で観たのはフランス映画の’最強のふたり’と、桃井かおり監督主演の’’Hee火”。



『最強のふたり』は、すかーんとして見やすい。ふつうに面白い。ソウルミュージック最高。
よく雑誌の映画特集で組まれる「元気を出したいときに観たい映画」でおすすめするなら、この映画、というかんじ。

Hee火は、中村文則原作の小説を先に読んでから観た。
出だしの桃井かおりの演技は樹木希林ばりに憑依がかっていて、この作品への情熱が伝わってきた。
でも、これは一人芝居のような舞台で表現した方が、観客も共犯意識が持てて、ヒリヒリして良さそう。

観客数が平日朝だったためか、わたし含めて三人だったので、他人事ながら心配してしまった。
でも、なんでこの映画がイオンシネマなのか??
九条のみなみ会館あたりでやった方が、需要ありそうと、勝手ながら思ってしまう。

レンタルでは、
西川美和監督の『ゆれる』
ペドロ・アルモドバル監督『ボルベール』


『ゆれる』は前から観たかったけど、なんだか重そう、、と躊躇して中々見る気がしなかったものの一つだったけれど、この監督は好き、と出だしから思った。
音楽の使い方もすきだし、内容は重いけど、すごい客観的に心理描写が描かれていて、引き込まれた。

そして、出先で雑誌をめくる度に西川監督最新映画の『永い言い訳』の紹介が目に飛び込んできて、これは見ろって言うことと思うしかない。
モックン主演。暗そう、でも観たい。

10月28日、京都シネマで舞台あいさつがあるらしいので、タイミング合えば見に行くぞ。


『ボルベール』は5年前に一度観ていて、ペネロペかわいいくらいの記憶しかなかったけど、今回は全部入ってきた。

内容はハード。でも、そのハードさを今は理解できる。

二作品とも何度も繰り返し観たい。


食欲の秋と共に、せんべえかじりながら寝転がって、今年は映画をたくさん観てしまいそう。



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by mosottto | 2016-10-19 14:26 | 映画のこと | Comments(0)