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そんで、セッションするのか?


昨日の夜、近所のドラッグストアで買い物をしてると、二軒隣に住んでいる夫婦と、ばったり遭遇した。
この夫婦とはいつも遠くから会釈するだけという、ごく浅い近所付き合いで、見かけたことも数回しかない。
「あ、こんばんは」と軽い挨拶をして去ろうとしたら、奥さんの方がわたしを引き留めた。

「あの!○○〇〇〇ちゃん??」と、わたしの旧姓のフルネームで呼ぶのだ。
旧姓で呼ばれることはここ数年なかったので、え!と、驚くと、その奥さんは、
「わたし、〇〇〇〇〇なんやけど、小学校が一緒やったの、覚えてる?」と、不安そうにのぞき込んだ。

あ!
そう言えば。
わたしは遠い記憶を呼び起こして、なんとなくだが、そういう名前の同級生、幼少期の面影をぼんやり思い出した。
でも、彼女とは特別親しかった記憶はない。
「もそっとちゃんの家にも、遊びに行ったことがあって、今でも家の風景とか覚えてる」と言う。
その子と自分の家で遊んだことなんて、記憶になかった自分に驚いた。
しかも、わたしは小学校のほとんどをストライキして行ってなかったのだ。
なのに。
その子はわたしのことを覚えていた。
いつも近所で遠目で挨拶することしかなかったのに、「ひょっとして」と思っていたという。

7、8歳の時の自分と、40代目前の自分がまったく重ならないと思っていたのに、人から見ると、面影をちゃんと残していたのだ。

一瞬、その時、時間軸がぐらぐらと揺れたように感じた。
ほとんど抹消したような過去の時間に、引き戻されたような感覚なのだ。

喋りたいことはなんだか山ほどありそうなのだが、ドラッグストアで立ち話できるような世間話でもなく、なんだか宙ぶらりんのまま、挨拶をして別れた。

帰り道、不思議そうに顔をのぞく息子に「お隣さんのお姉ちゃんね、おかあさんの小学校の同級生だったよ、すごいね。なんかおかあさん、小学校のころに戻ったような気分だ。不思議だね」
そう言って手を繋いで歩いて帰った。

三日月だった。

帰って夫にそのことを報告すると、「おれと同じやな」と言った。
夫も前に、幼稚園の時のクラスメイトに会い、夫は覚えてなかったが、向こうははっきり覚えていたという。
どちらも偶然音楽の道に進み、三十年越しの再会で、今年の年初め、ラテンバンドのライブでセッションしていた。

「そんで、再会を記念して、セッションするんか?」と、夫が当たり前のように聞いてきた。
ふつうは、お茶しに行こうとか、ランチしようとか、飲みに行こうである。
バンドマンでもないのに、センッションできるはずないやろ、と思ったが、こういう時、音楽をやっていたら、と無性にうらやましくなった。


しかしだ、もう三十年も前の自分を置いてきぼりにしてきて、突然、時間を超えて、7歳の自分と出会った気分になった一瞬だった。
出会いと言うのはすごいものです。


by mosottto | 2017-05-01 15:21 | エッセイ