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無秩序な中の心地よさ


整理ができない。

引き出しの中は、ぐちゃあっとなっているし、いつもだらしのなさで夫にブーブー言われている。

本屋の暮らしのコーナーに行くと、整理術の本がずらりと並んでいる。
最近は流行りなのか、お洒落なものが多い。
しかし、手に取ってぺらぺらめくった瞬間、頭がくらくらと揺れる。

並べ過ぎだ。
みんな、きれいに並べ過ぎだ。

こんなに「まっとうに」並べられると、とても生きた心地がしない。

若干呼吸困難になり、静かに本を閉じて元に戻した。
この本に用はない。



知り合いに、ミニマムな生活を目指して整理好きな主婦がいる。

なにやら整理好き友達がいるらしく、彼女らと日々、自分の家の’完璧に整理されたお気に入りゾーン’を写メに撮って、メールで送り合うとのこと。
そしてお互いの家に行き、整理ポイントを披露し合うという。

その話を聞いただけで、吐きそうになった。

彼女たちを我が家に招き入れたらどうなるのだろう、などと想像してしまう。

衣類がぱんぱんに押し込まれたクローゼット、スプーンやフォークが収納しきれてない乱雑な引き出しの中、分類されてるのかどうかわからないような領収書の山、意味のない物が転がっている我が家。
彼女たちは発狂するだろう。
お掃除スイッチを一気にオンにしてしまうこと大だ。



きっちり整理できていれば、物事が効率的に運び、スムーズに暮らせそうだが、「あれ、どこにやったっけ?」などと言いながら無駄な時間を過ごすのも嫌いではない。


去年写真家ソウルライターのドキュメンタリー映画を観ていたら、彼の家の中は実に無秩序であった。
自分の作品のネガなどが一切整理されていないため、作品集を作るのに一苦労するのだとか。

でも彼は言う。無秩序な中の心地よさがある。


そうか、整理され過ぎた部屋にいるととても生きた心地がしない理由がわかった。

物も人も雑多な方が好きなだけなのだ。








by mosottto | 2017-04-12 14:52 | エッセイ